国会議事録に見る米軍駐留時代の大阪市立大学 米軍接収時代その3

019参文委(1)  019参文委(3)  019参文委(4)  019参文委(5)  022本会議
第019回国会参議院文部委員会議事録(2)
(1954年8月2日)
国会議事録検索システムの検索結果からダウンロード、その一部を抜粋・編集して掲載。
誤字・脱字は、ダウンロードした文書のままで、上記表題は本サイトによる。

(本サイトによる前略)
○剱木亨弘君
(本サイトによる中略)
 次に大阪市立大学の接収校舎の問題について御報告いたします。本件につきましては去る七月十七日の当委員会におきまして、文部当局より一応の説明がありましたので、成るべく重複を避け、現地視察によつて見聞しました実情について申上げます。
 御承知のように大阪市立大学は、昭和二十四年新学制により旧大阪商科大学、大阪市立都島工業専門学校、大阪市立女子専門学校を併せ、商学部、経済学部、法文学部、理工学部、家政学部の五学部及び経済研究所より成る総合大学として発足したのでありますが、旧大阪商科大学の杉本町校舎は昭和二十九年六月その一部を大阪海兵団に転用されており、昭和二十年十月には更に占領軍当局から一週間以内の立退き命令に接し、現在問題となつております杉本町校舎施設の全面的接収となり、市内に散在する小学校校舎、南区の元道仁小学校、西区の元桜川小学校、南区の元大室小学校等にそれぞれ移転し、更に昭和二十四年、前述の大阪市立大学の創設に当つて、西区の元明治小学校校舎、元靱小学校校舎、北区の元北野小学校校舎等の旧小学校施設をも使用するに至つたのであります。昭和二十七年八月、杉本町校舎の一部接収解除に伴いまして、商、経、法、文の各学部の一部がこれに復帰したのでありますが、現在でも旧明治小学校、旧靱小学校が大学本部、経済研究所、商、経、法、文学部の教養課程の学舎として使用されており、理工学部は旧北野小学校校舎を使用するなど、四分五裂の観を呈しております。昭和二十六年以来大学学長、大阪市長等より文部大臣、特別調達庁長官等各方面に接収解除に関する陳情、懇願等がなされ、昭和二十七年八月その一部が解除されましたけれども、残余の土地三万五千九百五十一坪、建物三千八百七十四坪、即ち鉄筋コンクリ―ト三階建二棟、体育館及び室内プ―ル、運動練習場、屋外体育施設等々が未解除であります。最近この未解除の施設が病院施設から米軍海兵隊施設に転換され、その施設の入口横に大学構内への入口が仮設されている状況であり、学生、職員は運動場を通つて校舎に入ることになつております。又、本館玄関前に未返還区域が出張つており、校地の三万は金網に囲まれて接収施設と接しており、甚だ感じが悪い状況であります。校舎の後方運動場では、米軍の演習が行われ、しばしば喧騒をきわめ、研究、授業、教育上甚だしい支障を生じております。又、海兵隊移駐後は風紀上面白からぬ事件も若干発生しており、特に女子学生は普通住宅より離れている通学区間を毎日心配して登、退校しているような状態でありました。
 なお大学用地施設に隣接する附近の民有地が接収され、多数の兵舎が建設されている実情でありますから、教育環境としては、これら大学以外の施設についても同時に考慮されなければならないという問題も包蔵していることを附加えておきます。
 これらの事実から我々は米軍の接収が一時も早く解除されることを切望するものであり、特に、大学施設の接収が大阪市の多数の小学校校舎の転用となり、延いては大阪市における小学校教育の不正常授業に影響していることを考えますとき、本校舎早期の接収解除が極めて重大な問題であると痛感したのであります。
(本サイトによる中略)
○荒木正三郎君 それでは大阪市立大学の接収問題について文部大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、文部大臣は、先ほど私どもが視察をいたしました報告を聞いておられないので、若干重複するというきらいがあると思いますが、これは皆さんにお許しを頂きたい。この市立大学の問題につきましては、当文部委員会としても事態の実相を調査する必要があるということになりまして、先般大阪市立大学並びに市当局に参りまして、いろいろ実情を聴取いたしたのでございます。で、その結果いろいろの事実が判明したのでございますが、第一の問題は、従来市立大学は、朝鮮事変等のために負傷した将兵の治療のための病院施設として転用されておつたというのでございますが、この病院施設が不必要になれば返還するという大体の了解があつたようであります。従つて学校当局として、もそのことを期待しておつたわけでありますが、ところが最近傷病将兵の施設が必要でなくなつた、朝鮮事変等の結果、そういう必要がなくなつた。そこで返るものだというふうに考えていたところが、六月に至つて突然海兵隊の施設に転用されることになつた、そういうことから学校当局としても、これではいつ返るかわからないというふうなことから、関係方面に非常に力強い陳情を行われて来たのであります。そういう実情を私ども聞いたのでございますが、これは私が申上げるまでもなく、教育施設がほかの施設に比して優先的に接収解除になるべき性質のものだ、そういう了解もアメリカ側とはついておるというふうに開いております。又参議院のいろいろの決議においても、その趣旨は幾たびか議決されておる問題であります。そういう意味において、文部大臣も、この接収解除についてはいろいろ御尽力になつておることだと思います。又前の文部委員会において管理局長から、かなり詳細な御報告もありました。併しその報告を聞きましても、いつ解除になるかということについては目途がついておらないということになると思います。特に私はいろいろの点が指摘されなければならんと思うんですが、先ほども申したのですが、この大学施設が接収されているために、小学校が六校に亘つて大学に、接収という言葉はおかしいのですが、使われておる。そうして大阪市では七百学級以上の、数はちよつと記憶ありませんが、相当大きな数の二部授業が行われておる。特に最近生徒児童が非常に増加をして来て、接収された小学校では他の小学校と合併している、そのために二部授業をやつておる、こういう事情であり、小学校の生徒の中から、自分の学校を早く返してもらいたい、こういう要望が熾烈に起つておる。こういうふうに、大学教育自体でなしに、大学教育自体も重要な問題がたくさんありますが、それが小学教育にまで波及している、こういう実情であります。そういう点から、私はこの際大臣に、経過を開くということは前に管理局長から説明を聞いているので、大臣もそれ以上にはやはり文部省として私は同じ経過をお聞きすることになると思いますが、何かこれについて文部大臣は、特に御所見、或いは見通し、その他いろいろ政府部内においてなされた御努力、そういう点について一応お伺いしたいと思います。

○国務大臣(大達茂雄君) 大阪の市立大学の問題は、只今お話になりました通りでありますし、又従来の経過についても、この前の委員会で管理局長から申上げ、又或いは調進庁のほうからもお聞取りを願つたんじやないかと思います。私の承知しておるところでは、学校施設の接収されたものについては、できるだけ早く返すということに、原則的にそうなつておる。従つて殊に病院としては使用を廃止されたのでありますから、その原則、建前から言えば、可能な限り早く返してもらう、こういうことは当然なことであると思います。ただ、まあ向うはどういう都合で海兵隊にそれを使用するということになるのか、これは向うの都合で、はつきり私はわかりませんが、文部省としましては調達庁のほうにお願いをして、やはり建前もそうなつておることでありますから、何とか早く返してもらいたいということの折衝をお願いしておるのでありますが、これもまあ結局経過報告だけになるかも知れませんが、調達庁のほうでもその旨は了承し、又米軍当局のほうにも話合つておるのでありますが、調達庁自身としても、いつ頃それでは返してもらえるか、その辺はまだ見通しがつかないようであります。今後ともその関係方面にお願いもして、せいぜい米軍との話合いを進めてもらうようにしたい、こう思つておりますけれども、なかなかまあこれは相手のあることといいますか、はつきりしたことにはならんので、その点甚だ遺憾でありますが、まだいつ頃になつたら返してもらえるのか、その見通しは只今までのところではつかないというふうに私は承知しております。これは今後そういうことで努力して参りたいと、こう思つております。

○相馬助治君 関連して……。私も視察したのですが、行つて見て実に非常に問題が緊急な状態に立ち至つておるということ、それから現場を見なければ気分的にわからないんですけれども、将来これは恐ろしい問題が予想されるということ、こういう二つの点から非常に重要なことだと思つて帰つて参つたわけであります。その一つは学生運動、或いは職員の立上り等も荒木議員から触れられたように、今病院なんだ。この病院の使用目的が終れば当然として解除されるのだ、こういうことが井関さんあたりからも公式であるかどうかわからないけれども言われたらしくて、市長も最後に了解して学校の当局者も了解して、これを子供に、生徒に言い含めて来たらしい。ところが現実には重大な使用目的の変更をする場合には日本政府の事前了解を得ることという取極めがあるはずだと思うのです。どうも開くところによると、そういうふうな十分な了解もなしにどんどんと施設を新たに入れて既成事実を作つて、そうして学校のほうには又このまま海兵隊が入るのだというふうに押付けたという空気があるために先生が憤慨して、それから生徒も押え切れない状態なんです。これが一つです。
 それからもう一つは市立大学のほうは金網で阻まれて大部分は向うさんが使つていて、向うは楽しげにやつている。生徒たちはひどいところに入つて、ちよつと極端に言えば身動きもできない状態で授業をやられておるようです。而も各所に分散させられて大学の体を備えていない。而も一方からは、小学校から返してくれという矢の催促で学校自身も困つておる。いわばこれらを総合しますと、立上つて一泡吹かせて、そうして大衆運動的にやらざるを得ないような破目に追込まれて来ているわけなんです。私ども四人で火をつければ、おだてれば明日にも生徒は大挙して来るようなことがはつきりわかるような状態です、おだてなくてもちよつと言えば……。(笑声)私たちは参議院の文部委員会で十分これは考えてやる。文部大臣にもお願いしてみよう。外務省にもこれをお願いしてみよう。たから諸君は学生としてまじめに勉強していなさいと、大層気の利いたことを言つて帰つて来たわけです。従つてそういう状況から私は大臣に向つておきたいことは三つほどあるのです。一つは重大な使用目的の変更になつたときにどういう経緯で日本政府は了解を与えたのか、こういうことです。了解を与えるも与えないもなくて向うは軍事上必要なら使うのでしようけれども、併し取極めによれば使用自的が変更する場合には日本政府に事前に通告しなければならないというように安保条約には規定されているはずです。従つてそういう関連はどうなつているのか、六月のときの交渉はどうなつているのか。それからもう一つは来年の十月一日まではとにかく何が何でも使う、こういうことを言つているのだそうです。十月以降はその後は解除されることを期待していいのかどうかということに対しては、それは言明の限りでない。それは十月になつてみなければわからないのだ、こういうことなんだそうです。そこで従つてこのことは今すぐに海兵隊を追い出さなくても、実を言えば、さようなことを言うと学校や学生から叱られるかも知れんけれども、率直な話になればいつ幾日になれば完全に解除してやる、それまで我慢しろ、こういうことになれば何とか収まるかも知れんが、先きのことは先きのことでわからないということならば、それは収まらないと思う。そういう十月一日という日にちを切つてあるのはどういうことを内容としておるのかということを文部大臣に伺つておきたい。今お知りにならなかつたならば各関係の大臣とお話の上でこれはお聞きしたいと思うし、今知つていたならお聞きしたい。第三の問題はこれは水産大学の問題のように、水産大学だけが困つているのじやなくて、少し大げさに言うと大阪市の義務教育はこの問題のために非常に重大な問題に立ち至つているということなんです。日本でも一、二という二部教授の多い市です。そこへもつて来て六校も大学に使われている。そこで勢いこれというのも皆アメリカの兵隊がいるからこういうことになつているのだというふうに小学生諸君が了解している状態なんです。これは義務教育上且つ又私は日米親善の上からも極めて重大な問題だと思つて見て参つたわけなんです。従つて今の義務教育の関係から見て、所管大臣として本問題についての大達文相の所見並びに決意を含めて御見解をこの際承つておくならば大変にありがたいし、同時に学校当局等も一つの希望をもつのじやないかと思うのです。私は以上三点を是非大臣からこの際御見解を承つておきたいと思うのです。

○国務大臣(大達茂雄君) 今のお尋ねでありますが、この使用目的の変更についての了解の問題、それからやはり今聞きますと、来年の十月までは使う、併しそのあとのことは何とも言えん、こういうことを言つているということであります。どうも併し、言い分はわがままに思うのですれども、それらの点につきましてはなお実際上のどういうことでそうなつているのか、又それに対してどういうふうな外務省及び調達庁のほうで話になつているのか、そういう点について私はよく詳細存じませんので、管理局長からなり或いはその方面から御説明申上げたほうがいいと思いますが、なお私もこの問題についてよく調べてみたいと思います。
 それから大学を使われている結果として、小学校をその代りに大学に使つている、順押しになつて結局義務教育の方面にその皺が寄つている。殊に大阪のような二部教授の多いところでありますから、これは誠に困つたことであります。ただこれは私が十分詳細に使用の関係についての取決めと申しますか、申合せと申しますか、そういう点は十分存じておりませんが、今まで聞いておりますところでは、接収というか、日本の建物を向うが使つている、その場合に教育関係の建物については成るべく早く返すように考慮する、すぐ返すということではないのですが、できるだけ早くそのほうは空けるようにしたいということがたしかあつたように思います。それで、併し又別に病院に使つているものについては多少考慮するというようなことがあつて、病院に使つておればすぐにはできんが、そうでなければ教育関係のものは成るべく早く優先的に返すようにということがあつて、病院に使うのをやめたのだから、これはすぐ皆返すべきだということに一応学校側若しくは学生のほうでそう思つたということは私は無理はないと思うのです。ただ即時に返すということになつておつたかどうかわからんが、そういうふうに一応思い込むのも無理はないし、従つて勝手にということはないでしようが、合同委員会で話があつたのかないのか知りませんけれども、使用目的を変更して海兵隊の何かに使うということになれば、取決めの、殊に建前から見てこれは違反しているとか何とかいうことでなくても、少しわがまま過ぎるというふうに私は思います。それが学校、大学の学生、ひいては小学校のほうまでいろいろ気持ちの上から言つても甚だおもしろくない影響を与える、これは当然あり得ることでありますから、これは一つ外務大臣のほうにお願いをしまして、何とかできるだけ早く解決したいということで頼むよりほかしようがない、こういうので、これはまあアメリカが相手でありますから、追い立てるということもなかなかむずかしいことだろうと思います。できるだけ早く一つ何とか今の影響としても、今相馬委員の言われたように面白くない点がある、当然そういうことだろうと思います。これはお互いに面白くないことでありますから、できるだけ急速に解決するように、又来年の十月一日まではあけられないという恐らくは事情もあるだろうと思います。ただ今そこにおる、管理をしておる米軍側のほうからすぐあけ渡すというはつきりした権限はないような点があるのじやないかと思いますが、少くともその辺も明らかにしてもらうように、一つ外務省へお願いをし、私からも外務大臣にお願いをして、調達庁の方面で一つはつきり評価してもらうように進めて参りたいと、こういうふうに思います。
(本サイトによる後略)
019参文委(1)  019参文委(3)  019参文委(4)  019参文委(5)  022本会議

Copyright (C) 遊び学の遊邑舎 2014 All Rights Reserved.

inserted by FC2 system